日本人は住宅の内に入ると屋外用の履物を脱ぐという昔ながらの習慣を保持しつづけていて、そのことを考慮に入れると、まったく洋風化したかのようにも思える日本の生活様式は依然として欧米とはかなり違っている。この相違は、明らかに目に見える振舞いの違いとして現われるだけではなく、住意識の深層にも及んでいるようだ。私たちの住意識はいろいろの面で欧米人と違うが、中でもとくに著しいのは、住まいの“内と外”に関する感覚の違いだろう。
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日本人にとって、内とは履物を脱いで“上がる”床の上のことである。外と内とは履物を脱ぐという行為を通じて区別されるから、私的な領土としての家と外の社会とは、玄関の扉よりもむしろ靴が脱がれる上がり栃を境界として区分される。日本人は自分の領土に侵入されたくない訪問者を玄関の土間までは入れるが、上がり栃は越えさせずに追い帰す。これが「玄関払い」という拒絶のスタイルである。そうせずに「どうぞお上がりください」と言えば、それが初めて相手に心を許して私的な領土に迎え入れるサインになる。